▶︎空海伝説4 〜磐梯山の妖怪(ばんだいさんのようかい)〜
手長と足長の妖怪が悪さをしていた
昔、会津(福島県)の磐梯山に、「手長」「足長」という夫婦の妖怪が住んでおり、悪行を働いていました。 「足長」は、長い足を伸ばして、磐梯山から隣の博士山や明神嶽まで、ひとまたぎで歩き、空を真っ暗にして大雨を降らしていた。
その叫び声はものすごく怖かったといいます。
「手長」の方は、長い手で猪苗代湖の水をすくっては顔をざぶざぶ洗い、会津盆地にばらまいていたそうです。
この妖怪達が、息を吹きかけると大風が吹き、水をばらまくと大雨になったため、たびたび大洪水が起こり、作物に大被害が生じて村人は大変困っていました。
そこへ諸国行脚を続けていた空海が、この地に立ち寄られました。
そして、話を聞いた空海は、「私がその妖怪を退治しよう」といい、村人が引き留めたにもかかわらず、お経を唱えながら磐梯山を登ります。
そして、「手長」「足長」の住処を訪ねて、「お前達は出来ないことが無いと言っているそうだが本当か」と聞いた。
妖怪達が「俺たちに出来ない事は何も無い」と応えると、空海は「なら大きくなれるか」と挑発すると、妖怪達は自慢げに、あれよあれよと天まで届くほど大きくなった。
それを見た空海は、「ならば、小さくなれるか」と問い、懐から小さな壺を取り出して、「この壺に入るのはお前達には無理だろう」とさらに挑発した。
すると妖怪たちは、簡単だとばかり壺の中に飛び込んだ。
空海は、それを見届けるとすぐさま壺の蓋をギッチリと締め、 真言を唱えて封印しました。
そして、その壺を磐梯山の頂上に埋めました。
以来、会津はもとの明るい里に戻ったそうです。
磐梯山は今日、登山者で賑わっています。
磐梯山の頂上にあと少しという所には「弘法清水」があります。
登山者はこの水で勇気づけられ力をつけて頂上をめざすそうです。
また、磐梯山には、磐梯山を七回りするほど巨大な妖蛇が棲んでいましたが、空海が磐梯西麓の烏帽子ケ嶽に鎮めたという伝説も残されています。
その折り、空海は密教興隆の場を探すため三鈷杵を空中に放ちました。
その三鈷杵は、何と退治した妖蛇の尾の端があった場所に落ちたのです。
空海は、そこに一大伽藍を建立しました。 このお寺は「尾寺」と名付けられ、地元の人々の信仰の場になったそうです。