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▶︎空海伝説1 〜十夜ヶ橋(とやがばし)〜

橋の下で野宿した空海

愛媛県の大洲市に、「十夜ヶ橋」(とやがばし)という橋があります。

その橋の下には空海が野宿をしている石像があります。 今を去ること約一二〇〇年前、空海は衆生済度大願のため四国の各地を行脚していましたが、この地で日が暮れたので民家を探しました。

しかし、人気がなく民家も見当たりません。

ふと見渡すと小川にかかる小さな橋がありました。

空海は、仕方なくその橋の下で一夜を過ごすことにしました。

空腹と寒さに耐えながら野宿をされた空海は、夜明けを待ちかねて一夜も十夜に感じたそうです。

やがて夜が明けた時、空海は、『行き悩む浮世の人を渡さずば一夜も十夜の橋とおもほゆ』という歌(現在、永徳寺の御詠歌)を詠んで、久万菅生山に旅立たれました。

この歌は、「悩み迷う人々を悟りの世界に導くために成すべき事を考えると、一夜が十夜も感じるほど長い長い夜であった」という意味で、空海の衆生救済の強い思いを詠まれたものです。

この言い伝えから、この橋は「十夜ヶ橋」と呼ばれるようになり、橋のたもとに大師堂が結ばれ、橋の下には横たわって野宿をする空海の石像が置かれるようになりました。

この十夜ヶ橋を渡るお遍路さんは、「もしかすると、空海が橋の下で寝ておられるかも知れないから」と、橋の上を通る時に杖をつきません。

その習慣が広がり、今では四国遍路などに掛かっている橋を通るときは、どの橋でも空海が安眠できるよう杖をつかないという慣わしになっているそうです。

また、十夜ヶ橋の下は「修行」として国内で唯一公式に野宿が認められており、野宿する巡礼者のために、十夜ヶ橋納経所ではゴザを貸し出しています。十夜ヶ橋は、「永徳寺(えいとくじ)」の境外仏堂として、四国八十八箇所霊場に数多くある番外札所の中でも一番人気のある番外札所になっています。

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