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▶︎空海伝説2 〜五筆和尚(ごひつわじょう)〜

同時に5つの筆を持って一気の文字を書いた

空海は書でも人並み外れた天才でした。

その名筆ぶりは当時より評判で、後世にさまざまな伝説を残しています。

「弘法も筆の誤り」「弘法筆を選ばす」などの、書に関する有名な格言も残されています。 唐の都長安の宮中に、2間にわたる壁面があり、王羲之(おうぎし)の書が書かれていました。

長い歳月により王羲之の書が消えてしまったのですが、だれも王羲之の名声に押されて筆をとって修復に応ずる者がいませんでした。

そこで順宗皇帝は唐に留学していた空海が筆の名人と聞き及んで、宮中に呼び寄せました。 宮中に上がった空海は、驚くことに両手両足に筆を持ち、口にも筆をくわえると、壁に向かって座り、五本の筆を動かして一気呵成に五行詩をしたためたといいます。

五本のうち一本は詩の一行目を、二本目は詩の二行目を書くといった具合で五本の筆を同時に動かして五行詞を書き上げたのです。

その場に居合わせた人々は、あまりの秘技に驚き感嘆の声を上げました。

空海は、息もつかぬ間に、さらに別の一間に墨汁を注ぎました。

すると、たちまち巨大な「樹」の字が浮かび上ったので、順宗皇帝が大変驚き、空海に「五筆和尚」(ごひつわじょう)の称号を与え、菩提樹の種で作った数珠を賜ったといいます。

その数珠は現在も、京都の東寺に保管されているとのことです。

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